私たちはいま、「人を増やすことでしか売上を伸ばせない」という前提が、少しずつ揺らぎはじめている地点に立っているように思います。これからの営業組織の競争力は、頭数だけではなく、商談データの精度とその運用のしかたにも、大きく左右されていくのではないでしょうか。
営業の競争力は「人数」から「データ」へ
これまで多くの営業組織は、売上を伸ばすための確実な手段として「人を増やす」という選択肢をとってきました。100人いれば、100人ぶんの会話が生まれ、100人ぶんの提案が動きます。組織の生産能力は、ほぼ頭数に比例して伸びていく、という考え方です。
一方で、商談の中身を構造化して扱えるようになると、この前提は少しずつ揺らいでいきます。誰が、いつ、どんな顧客に、何を話し、どこで詰まり、どこで決まったのか──こうした情報が組織の共有資産として残っていけば、上位プレイヤーの営業の型を、組織のなかでより再現しやすくなっていきます。
「人を増やす」から「型を回す」へ。競争の軸足が、リソースの量だけではなく、データの整え方にも広がっていくように感じています。
これまでのDXが、なぜ機能しなかったか
SFA、CRM、商談録音、議事録ツール──ここ10年で、営業に関わるツールは確実に増えてきました。それでも「データドリブンな経営」と「現場の手応え」のあいだに距離が残ってしまうのは、入力という重い負担を、現場の善意に頼りすぎてきた側面があるからではないかと考えています。
マネージャーは、現場が入力を頑張ってくれれば組織が強くなると信じています。一方で現場の方は、お客様と向き合おうとするほど、入力に割ける時間が減っていきます。両者の意図は決してずれていないのに、結果としてデータは集まっても十分に活かしきれない、という状況が生まれやすくなります。
「入力されたデータ」と「使われるデータ」のあいだには、まだ少し距離があります。AIが担えるのは、その距離をやわらげる役割なのだと思います。
AI×少人数で、100人組織に勝つ条件
「AIと数人で、100人規模の組織に肩を並べる」というと、少し大げさに聞こえるかもしれません。ただ、条件を整理してみると、決して荒唐無稽な話ではないと感じています。少人数でも成果を出している組織には、共通する3つの特徴があるように思います。
- ひとつ。データを残す手間が、ほとんど発生していないこと。商談を録っておくだけで、議事録・CRM・タスクが自然に整っていきます。「入力する」という工程そのものが、業務の負担として意識されにくくなっています。
- ふたつ。型が、個人ではなく組織の資産として共有されていること。勝ちパターンが個人のメモにとどまらず、検索しやすい形で残っているため、ほかのメンバーも再現しやすくなります。
- みっつ。判断のスピードが、情報の鮮度に追いついていること。商談の直後にデータが整っているので、上長のレビューや次のアクションを、その日のうちに動かしやすくなります。
この3つが揃ってくると、頭数で進めてきた組織との差は、少しずつ広がっていきます。100人で1ヶ月かけて回していたサイクルが、AIと数人なら数日に近いペースで回せるようになる──そんな景色も、現実味を帯びてきます。これは技術だけの話ではなく、組織のつくり方そのものの問題でもあると考えています。
「商談データ」を中核資産に置く
私たちが DEKISUGIKUN を設計するときに大切にしたのは、「商談データを、組織のいちばん深いところに置く」という考え方です。本来、商談はとても価値の高い情報資産であるはずなのに、いちばん整理されないまま残ってしまいやすい領域でもあります。この状態を、少しずつでも変えていきたいと考えてきました。
録音、議事録、CRM、タスク、共有メモ──いまはバラバラに存在しているこれらを、ひとつの流れのなかで扱えるようにしていきたいと考えています。営業の方には、できるだけお客様と向き合う時間に集中していただいて、それ以外の整理作業はAIが下支えする──そんな分担を目指しています。
DEKISUGIKUNの開発思想は、Top Seller Advance(飛田 昌邦)が培ってきた営業組織づくりの知見と、Actionary(林 優輝)のAI実装の経験が交わるところから生まれています。「ツールを入れれば成果が出る」というよりも、「組織の意思決定が、毎日きちんと回るサイクル」を支えるためのインフラでありたい、という思いで設計しています。
これからの3年で起きること
これからの3年ほどのあいだに、営業の現場で起きそうな変化を、いくつか挙げてみます。商談データを起点に動く組織と、人手中心の進め方を続ける組織のあいだに、生産性の差が少しずつ広がっていく可能性は十分にあります。前者は、少ない人数でより広い領域をカバーしやすくなり、後者は、人を増やしても伸びしろを実感しにくくなる場面が増えていくかもしれません。
これは「AIに仕事を奪われる」という話ではないと考えています。むしろ、営業の方が本来やるべき仕事に、より集中していける方向に近いはずです。お客様と向き合い、関係を育て、複雑な判断を引き受けていく。データの整理、転記、報告といった、必ずしも人がやらなくてもよい作業が、少しずつ人の手から離れていく──そういった変化が、これから本格化していくのではないでしょうか。
営業の方に集中していただきたいのは、お客様と向き合う時間。それ以外の作業は、AIが下支えできる領域だと考えています。
結びに
「AIと数人で、100人規模の組織に並ぶ」という景色は、すでに一部の現場で見えはじめています。違いを生むのは、ツールを入れるかどうかというより、商談データを組織の中核資産として扱おうとする姿勢のほうかもしれません。
私たちは、そうした姿勢を持つ組織のみなさまとご一緒しながら、これからの営業のあり方を一緒に考えていきたいと思っています。DEKISUGIKUN は、そのための道具であると同時に、ひとつの考え方でもあります。引き続き、現場のリアリティに学びながら、丁寧に磨いていければと思います。

